聖書と歴史の学習館

ハランからの脱出 ヤコブとラバンの和解

Laban & Jacob make a covenant together/ラバンとヤコブの契約
Illustrators of the 1728 Figures de la Bible, Gerard Hoet and others
01/04

延長を重ねたヤコブの労働期間

ヤコブは故郷のカナンを離れ、ハランへ行き、叔父のラバン(※)のもとで働いていました。最初の7年間は、ラケルを妻に迎えるという約束のもとで労働しましたが、欺かれて、姉レアと結婚させられてしまいます。ラバンは「もしおまえがラケルも妻に欲しければ、これからまた7年間必死で働きなさい。そうすれば、望み通り、妹のラケルをおまえにやろう。」と言います。ヤコブは、さらに7年間働き、ようやくラケルを妻としました。

※ハランのリベカの兄弟。ハランはメソポタミアのパダン・アラムという地域の都市。

ヤコブの最愛の妻ラケルとの最初の子ヨセフが生まれたとき、ヤコブは故郷のカナンに帰ることを望みました。しかし、ラバンは報酬を与えるので、まだとどまるようにヤコブを説得します。神の祝福を受けたヤコブがいたからこそ、ラバンは裕福になったことを、占い師から聞いて知っていたからです。

ヤコブは、まだらや灰色の家畜(山羊と羊)を報酬としてもらうことを条件に、引続き、ラバンのもとで働くことを承知しました。その後、6年間ラバンのもとで働きます。ヤコブの家畜はどんどん増え、召使も大勢かかえるようになりました。そして、ヤコブもかなりの財産を持つことができ、子宝にも恵まれました。

ヤコブが恵まれるようになると、ラバンの息子たちは嫉妬し、不平をこぼすようになり、ラバンの態度も次第によそよそしくなってきました。

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Old Testament

ラケルがヨセフを産んだ時、ヤコブはラバンに言った、「わたしを去らせて、わたしの故郷、わたしの国へ行かせてください。あなたに仕えて得たわたしの妻子を、わたしに与えて行かせてください。わたしがあなたのために働いた骨折りは、あなたがごぞんじです」。ラバンは彼に言った、「もし、あなたの心にかなうなら、とどまってください。わたしは主があなたのゆえに、わたしを恵まれるしるしを見ました」。また言った、「あなたの報酬を申し出てください。わたしはそれを払います」。

日本聖書教会「旧約聖書」 第30章25節~28節

02/04

ヤコブの脱出

Jacob's Flight/ヤコブの脱出
1829 illustration by Julius Schnorr von Carolsfeld

ラバンとその息子たちの態度に、ヤコブは我慢していましたが、故郷カナンを離れてから20年ほど経った頃、神から「お前の先祖の国、カナンに帰れ」と啓示を受けます。妻たち(ラケルとレア)にそのことを話すと、彼女たちもラバンに不満を抱いており、ヤコブがカナンへ帰ることに賛同しました。

そして、ある日、ラバンが野原で羊の毛を刈っているとき、気が付かれないように、ヤコブは脱出します。妻と子、側妻、多くの財産を奪って、故郷のカナンに向かいました。そのとき、ラケルは、父親の守り神(テラピム)を盗み出しました。こうして、カインたちは、ユーフラテス川を越え、ギルアデの地へ向かいました。


03/04

ラバンの追跡と神からの警告

ラバンは3日後にそのことを知り、男たち数名を連れて後を追いました。7日後にようやくヤコブたちが見えたときには、ギルアデの山地まで来ていました。その夜、ラバンの夢に神が現れ「ことの良し悪しをヤコブと語らないように自制せよ」と警告されました。

旧約聖書

ヤコブはこうして、すべての財産を持って逃げ出し、川を渡りギレアドの山地へ向かった。ヤコブが逃げたことがラバンに知れたのは、三日目であった。ラバンは一族を率いて、七日の道のりを追いかけて行き、ギレアドの山地でヤコブに追いついたが、その夜夢の中で神は、アラム人ラバンのもとに来て言われた。「ヤコブを一切非難せぬよう、よく心に留めておきなさい。」

©日本聖書教会「旧約聖書」
創世記 31章21節~24節

04/04

平和の契約

The Heap of Witness/証拠の塚
Illustrators of the 1890 Holman Bible

次の日、ラバンはヤコブに追いついたとき、危害を加えることはしませんでした。昨晩、神からの警告があったからです。ラバンは「こそこそと逃げ出すとは、いったいどういうことだね。しかも、わしの娘まで連れて。もし去りたいのならわたしは手鼓や琴で喜び歌ってあなたを送りだしたのに」と言って非難しました。

すると、ヤコブは「この20年間、あなたのために働きました。14年間は二人の娘さんをいただくため、6年間は自分の群れを手に入れるため。しかもあなたは、報酬を十回も減らしたんです。しかし、神は何もかもご存じだった。あなたのひどい仕打ちも、私が一生懸命に働いたことも見ておられた。それで、昨晩あなたの夢に現れなさったのです。」

ラバンは昨晩の神からの警告もあったので納得しました。そして、ヤコブとラバンは和解し、平和の契約を結びました。そのしるしとして、石を集め塚を築きました。その塚は「証拠の塚(エガル・サハドタ/ガルエデ)」と名付けられました。

その後、お互いにこの線を越えて攻撃をしかけたりしないよう、神に誓いを立てました。

そして、その晩は一緒に食事をし、次の朝、ラバンは早々と起きて、娘たちと孫たちに別れのキスをして、引き返していきました。

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Old Testament

ラバンは答えてヤコブに言った、「娘たちはわたしの娘、子どもたちはわたしの孫です。また群れはわたしの群れ、あなたの見るものはみなわたしのものです。これらのわたしの娘たちのため、また彼らが産んだ子どもたちのため、きょうわたしは何をすることができましょうか。さあ、それではわたしとあなたと契約を結んで、これをわたしとあなたとの間の証拠としましょう」。そこでヤコブは石を取り、それを立てて柱とした。ヤコブはまた一族の者に言った、「石を集めてください」。彼らは石を取って、一つの石塚を造った。こうして彼らはその石塚のかたわらで食事をした。ラバンはこれをエガル・サハドタと名づけ、ヤコブはこれをガルエドと名づけた。

©日本聖書教会「旧約聖書」
31章43節~47節
〔出典・参考〕
日本聖書教会「旧約聖書」