聖書と歴史の学習館

雷の子大ヤコブ

Saint James the Greater
Guido Reni/グイド・レーニ 1636-1638年
ヒューストン美術館
01/02

大ヤコブ・ヨハネ兄弟

大ヤコブは、ゼベダイの子であり、ヨハネと兄弟(兄)である。ガリラヤ湖畔のベトサイダで漁業を営んでいた。出身、生業ともにペトロ・アンデレ兄弟と同じだ。ある日、大ヤコブは、父と弟のヨハネと共にガリラヤ湖畔の漁船の中で網の手入れをしていた。そこへ、イエスがやって来て、兄弟に声を掛けた。すると、二人はすべてを捨てて、イエスの弟子となった。

ヤコブ・ヨハネ兄弟は、血気盛んな荒々しい気性を持つため「雷の子ら(※)」と名付けられたといわれている。

サマリア人の村へ宣教に訪れたときには、自分たちが歓迎されないのを見て、「彼らを焼き滅ぼしてしまいましょうか」とイエスに告げ、戒められたエピソードもある。

大ヤコブは、ペトロ、ヨハネとともにイエスの三側近。12弟子の中のいわば「トップスリー」であった。

※伝承では、大ヤコブの父ゼベダイは、船数隻を保有し、使用人を雇うことができるほど、とても裕福な漁師で、エルサレムの都にも魚を出荷していたといわれている。

※大ヤコブとヨハネの母親サロメは、マリアの妹であった。イエスとヤコブ兄弟とは従兄弟(いとこ)であった。

※ヨハネによる福音書を記した「ヨハネ」は大ヤコブの弟だ。しかし、ヨハネによる福音書の中では、21章2節に「ゼベダイの子たち」と記されている以外には、兄ヤコブ(大ヤコブ)については、一度も言及されていない。

New Testament

ゼベダイの子ヤコブとその兄弟ヨハネが、父親のゼベダイと一緒に、舟の中で網の手入れをしているのを御覧になると、彼らをお呼びになった。この二人もすぐに、舟と父親とを残してイエスに従った。

新約聖書/マタイによる福音書4章21節~22節
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ゼベダイの子ヤコブとヤコブの兄弟ヨハネ、この二人にはボアネルゲス、すなわち、「雷の子ら」という名を付けられた。

新約聖書/マルコによる福音書3章17節
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大ヤコブと小ヤコブ

大ヤコブの「大」は、信仰のあつさや偉大さ、年齢等を意味するものではない。アルファイの子ヤコブ「小ヤコブ」と区別するために付けられたものだ。小ヤコブは、大ヤコブよりも年長であったし、大ヤコブの方が、信仰があつかったり、布教の実績が優れているなどという記録もない。ヤコブに「小」が付されて「小ヤコブ」と呼ばれるのは、弟子になった順番が、大ヤコブより後だったからといわれている。今でも多くの修道会では、最初に入会した者を「major(大)」と呼び、あとから入会した者は、たとえ年長であったり、聖徳に優れていたとしても「minor(小)」と呼ばれる。

New Testament

イエスは、天に上げられる時期が近づくと、エルサレムに向かう決意を固められた。そして、先に使いの者を出された。彼らは行って、イエスのために準備しようと、サマリア人の村に入った。しかし、村人はイエスを歓迎しなかった。イエスがエルサレムを目指して進んでおられたからである。
弟子のヤコブとヨハネはそれを見て、「主よ、お望みなら、天から火を降らせて、彼らを焼き滅ぼしましょうか」と言った。イエスは振り向いて二人を戒められた。

新約聖書/ルカによる福音書9章51節~55節
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鳴り響く説教の声

イエスの昇天後、大ヤコブは宣教活動を行なった。大ヤコブが「雷の子(※1)」と呼ばれたもう一つの理由は、声の大きさといわれる。大ヤコブの説教の威力は凄まじく、大ヤコブの鳴り響く説教の威力によって「悪人どもをふるいあがらせ、怠惰な人びとを目覚めさせ、その深遠さにだれもが賛嘆しないではおれなかった(※2)」と伝えられている。また、中世最初の科学的神学者と言われるベーダは、大ヤコブの声が、あと少しでも大きかったら、誰も彼の声を聞き取ることができなかっただろうと述べています。

※1:当時のヘブライ語の「雷の子(ボアネルゲス)」には「神の声」という意味(訳)もある。

※2:ヤコブス・デ・ウォラギネ「黄金伝説」より

〔出典・参考〕
日本聖書教会「新約聖書(新共同訳/口語訳)」/新日本聖書刊行会「新改訳聖書第三版」/創元社「聖書人物記」/日本文芸社「人物でよくわかる聖書(森実与子著)」/株式会社カンゼン「聖書の人々」/wikipedia/webio「世界宗教用語大事典」/kotobank.jp