天使長ルーシェルは、神に反逆すべく、神の最も愛するアダムとエバをそそのかし、神に禁じられていた善悪知る木の実を食べさせてしまいました。これが人類の堕落です。堕落とは、アダムとエバが、神の命令を無視して、サタンの言葉を信用し、サタンとの契約を結んでしまったこと(※)です。
結果として、人間の所有権が神からサタンに渡ってしまいました。人間が「私の主人はあなたです」ということを行動で示し、サタンと契約してしまったのです。このサタンとの所有権の契約は「原罪」とよばれます。
※旧約聖書には、失楽園の物語として、象徴的に記録されていますが、具体的には天使長とエバが愛の関係(性関係)を結んだことです。これにより、人間の所有権がサタンに渡ってしまいました。これに伴い、人間が支配すべき被造世界の所有権もサタンに渡ってしまいました。
神は、堕落したアダムとエバのために、すぐにでもメシヤ(救い主)を送り、サタン世界から人間を奪い返そうとされました。いわゆる「人類の救援の摂理」です。本来なら、人類救援の摂理(救いの摂理)は、アダムとエバの時代に、終わらせることができたはずです。
しかし、サタンが妨害します。サタンが人間の主管者(支配者)となり、人間の所有権を主張しているため、人類の救済の摂理がなかなか進まないのです。サタンが人間を手放さないのです。
ところで、霊界や地上界(天宙)には、絶対的な原理(掟おきて)があります。神ですら、原理にから外れた行いはできません。サタンが人間の所有権を主張することは、原理にかなっていることであり、神ですら、原理に外れた形で人間をサタンから奪い返すことができないのです。人類はいわば「サタンに軟禁されている」状態です。
原理は神が創造したものですが、神は絶対的なお方なので、原理から外れた摂理は、神自らを否定することになるため、神ですらできないのです。これが、神が人間をすぐに救うことができない理由です。
サタンが神に対して、人間の所有権を主張できる根拠のことを「讒訴(ざんそ)条件」と呼んでいます。讒訴条件の代表は「罪」です。罪とは「神の子なら(本来の人間なら)起こさない行為、あり得ない行為」のこと。つまり、原罪(=人間の堕落)をはじめ、人間が犯してしまった罪などです。
堕落の結果、人間が神の創造目的(神のみ意)に反すること(罪)をするようになってしまいました。そのため、サタンは「人間は神の子ではない!神の子ならなぜあんなことをするのか」、「神の子なのに、なぜ私と関係を結んだのか」と主張するのです。讒訴条件は原理にかなっているため、神は否定できないのです。
そこで、神は人間に命令し、神の言葉を信じさせ、従わせようとするのです。人間に神の子ならではの振る舞い(行い)をさせとうとするのです。これが人類救済の摂理です。神に選ばれ、神の命令に従った人間(※)の行いを根拠にして、神はサタンに対して「サタンよ、見なさい。やっぱり人間は私の子ではないか。」ということを主張できるのです。そして、人間の所有権を神に戻そうとされているのです。
※カインやアベル、ノア、アブラハムなどの摂理の中心人物
神が人間を救うために、人間に命令する行為の内容を「蕩減条件」といいます。蕩減条件は原理にかなっているため、蕩減条件が立てられた場合は、サタンですら屈服せざるを得なくなり、人間が神のもとへ帰ることができるようになるのです。
神のもとへ帰ることを「復帰」といいます。本来、神のもとにいた人間がサタンの手に渡り(軟禁状態)、そこから復帰する(奪い返す)ということです。