ステファノ 最初の殉教者となった敬虔なる執事

イエスの教えの伝道者たち

ステファノ「殉教の冠」を授かる

天使のような顔を持つといわれるステファノ


01/05

ステファノ

ステファノは、使徒を補佐する7人の執事のうち最も優秀な人物でした。伝道にも熱心で、病気をいやすなどの奇跡を行うこともでき、人々からの信頼が寄せられていました。しかし、ユダヤ教指導者からの反感を買い、律法を犯す者として告発されてしまいます。裁判の場で、ステファノは神の摂理を訴え、弁明しましたが、石打ちの刑で、キリスト教最初の殉教者となってしまいました。処刑人の赦しを祈るなど、ステファノは、最後までイエスの教えを守り抜いた敬虔な執事でした。


02/05

恵みと力にあふれたステファノ

初代教会(エルサレム教会)は、急速に信徒が増加(※1)しました。信徒が増えると、配給等トラブル(※2)も生じるようになり、12使徒は祈りや伝道に専念することが難しくなってきました。そこで、12使徒を補佐する7人の執事(※3)を選び、当面の問題を乗り切ることにしました。

7人の執事は、日常品や食糧の配給・監督をしたり、食事の世話を行ったり、説教や洗礼までも行ったといわれています。

そんな執事の中の一人がステファノでした。彼は執事の中でも群を抜いており、知性に恵まれ、イエスの教えの意義を深く理解していました。また、熱心に伝道活動も行いながら、奇跡で人々の病気も癒やすこともしました。

ステファノは「信仰と聖霊に満ちた人」「恵みと憐れみに満ちた人」などといわれ、新約聖書には、すばらしい活動内容が記録されています。

※1:教会を創設したパレスチナ地方のユダヤ人(ヘブライ語を話すユダヤ人/ヘブライスト)だけでなく、ギリシア語を話すユダヤ人(ヘレニスト)も加わるようになりました。

※2:ギリシア語を話すユダヤ人(ヘレニスト)が教会からの配給を十分受けられないという苦情。

※3:この7人は、キリスト教(カトリック教会)の伝統的な聖職位階の一つである「助祭」のルーツといわれています。助祭は司祭につぐ職位です。

New Testament

そのころ、弟子の数が増えてきて、ギリシア語を話すユダヤ人から、ヘブライ語を話すユダヤ人に対して苦情が出た。それは、日々の分配のことで、仲間のやもめたちが軽んじられていたからである。
そこで、十二人は弟子をすべて呼び集めて言った。「わたしたちが、神の言葉をないがしろにして、食事の世話をするのは好ましくない。それで、兄弟たち、あなたがたの中から、“霊”と知恵に満ちた評判の良い人を七人選びなさい。彼らにその仕事を任せよう。わたしたちは、祈りと御言葉の奉仕に専念することにします。」
一同はこの提案に賛成し、信仰と聖霊に満ちている人ステファノと、ほかにフィリポ、プロコロ、ニカノル、ティモン、パルメナ、アンティオキア出身の改宗者ニコラオを選んで、使徒たちの前に立たせた。使徒たちは、祈って彼らの上に手を置いた。こうして、神の言葉はますます広まり、弟子の数はエルサレムで非常に増えていき、祭司も大勢この信仰に入った。

使徒言行録6章1節~7節
©日本聖書教会「新約聖書」

03/05

ステファノの逮捕

イエスの教え(福音)を信じるキリスト教徒が増えるにつれて、ユダヤ教の指導者(祭司や律法学者、長老たち)は、新たな勢力として脅威を感じるようになっていました。 彼らは、キリスト教信徒を何とか陥れようと躍起になっていました。

あるとき、ユダヤ教指導者たちは、ステファノと議論しました。しかし、ステファノは知恵のかぎりを尽くして語ったので、誰も太刀打ちできませんでした。ユダヤ人指導者たちは、ことごとく論破されたために、怒りと嫉妬、恨みに燃えました。そして、民衆や律法学者をそそのかし、「神や神殿、モーセを冒涜した」という罪を着せ、ステファノを逮捕し、裁判の場(最高法院)に連れて行きました。

※ステファノと論争したのは、すべてギリシア語を話すユダヤ人だったといわれています。

New Testament

さて、ステファノは恵みと力に満ち、すばらしい不思議な業としるしを民衆の間で行っていた。ところが、キレネとアレクサンドリアの出身者で、いわゆる「解放された奴隷の会堂」に属する人々、またキリキア州とアジア州出身の人々などのある者たちが立ち上がり、ステファノと議論した。しかし、彼が知恵と“霊”とによって語るので、歯が立たなかった。
そこで、彼らは人々を唆(そそのか)して、「わたしたちは、あの男がモーセと神を冒涜する言葉を吐くのを聞いた」と言わせた。また、民衆、長老たち、律法学者たちを扇動して、ステファノを襲って捕らえ、最高法院に引いて行った。
そして、偽証人を立てて、次のように訴えさせた。「この男は、この聖なる場所と律法をけなして、一向にやめようとしません。わたしたちは、彼がこう言っているのを聞いています。『あのナザレの人イエスは、この場所を破壊し、モーセが我々に伝えた慣習を変えるだろう。』」最高法院の席に着いていた者は皆、ステファノに注目したが、その顔はさながら天使の顔のように見えた。

使徒言行録6章8節~15節
©日本聖書教会「新約聖書」

04/05

ステファノの殉教

裁判の場で、ステファノは弁明しました。アブラハムから始まる、モーセ、ダビデ、ソロモンと続くイスラエルの救いの歴史、その救いの歴史に対して人びとが神にしてきた過ち、そして今のイスラエルの人も救い主である神を裏切り、イエスを死に至らしめたことを理路整然に述べました(使徒言行録7章2節~60節)。

「これまで、あなた方の先祖に迫害されなかった預言者はいない」「イエスを殺したのは、あなた方だ」と言われ、怒りが心頭に発したユダヤ人たちは、ステファノにいっせいに襲いかかり、彼を外に引きずり出して、石打ちの刑にしました。それでも彼は「主よ、この罪を彼らに負わせないでください」と赦しを祈りながら、息絶えました。

律法学者や長老などのユダヤ人指導者により殺害されてしまったステファノ。その殉教に至る過程は、イエスの処刑の過程が再現されているようにもみえます。ステファノという名は、ギリシャ語で「冠」という意味です。その名にふさわしく、最後まで、キリスト教の精神を貫いたステファノは、「殉教の冠」を授かったといえるでしょう。

※ステファノの殉教は西暦35年前後のことといわれています。

ステファノの殉教


この門外でステファノが殉教したと伝えられている
エルサレム旧市街 Gate Jerusalem Holy Land
聖ステファノ門/ライオン門


New Testament

「…かたくなで、心と耳に割礼を受けていない人たち、あなたがたは、いつも聖霊に逆らっています。あなたがたの先祖が逆らったように、あなたがたもそうしているのです。いったい、あなたがたの先祖が迫害しなかった預言者が、一人でもいたでしょうか。彼らは、正しい方が来られることを預言した人々を殺しました。そして今や、あなたがたがその方を裏切る者、殺す者となった。天使たちを通して律法を受けた者なのに、それを守りませんでした。」
人々はこれを聞いて激しく怒り、ステファノに向かって歯ぎしりした。ステファノは聖霊に満たされ、天を見つめ、神の栄光と神の右に立っておられるイエスとを見て、「天が開いて、人の子が神の右に立っておられるのが見える」と言った。人々は大声で叫びながら耳を手でふさぎ、ステファノ目がけて一斉に襲いかかり、都の外に引きずり出して石を投げ始めた。証人たちは、自分の着ている物をサウロという若者の足もとに置いた。
人々が石を投げつけている間、ステファノは主に呼びかけて、「主イエスよ、わたしの霊をお受けください」と言った。それから、ひざまずいて、「主よ、この罪を彼らに負わせないでください」と大声で叫んだ。ステファノはこう言って、眠りについた。

使徒言行録7章51節~60節©日本聖書教会「新約聖書」

05/05

キリスト教徒に対する迫害の強化

ステファノの殉教をきっかけに、エルサレム教会に対する迫害と弾圧は厳しくなりました。12使徒たちはエルサレムに残りましたが、迫害に耐えかねた信者たちは、ユダヤ地方やサマリア地方に逃亡しました。

New Testament

その日、エルサレムの教会に対して大迫害が起こり、使徒たちのほかは皆、ユダヤとサマリアの地方に散って行った。しかし、信仰深い人々がステファノを葬り、彼のことを思って大変悲しんだ。

使徒言行録8章1節~2節©日本聖書教会「新約聖書」

〔参考・引用〕
創元社「聖書人物記」/日本文芸社「人物でよくわかる聖書(森実与子著)」/株式会社カンゼン「聖書の人々」/wikipedia/webio「世界宗教用語大事典」/女子パウロ会「ラウダーテ」/目から鱗 使徒パウロの生涯「強いステファノ・弱いペトロ・迫害者パウロ」