アブラハムの生誕

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アブラハムとは

アブラハムはノアの洪水後、神による人類救済の摂理を進めるための中心人物として選ばれ、神から祝福された預言者です。ノアの洪水から約400年後、ノアの息子セムから数えて、ちょうど10代目にあたるの子孫です。

現在のユダヤ人はアブラハム-イサク(次男/妻サラとの子)-ヤコブの子孫にあたり、アブラハムはユダヤ人の始祖とされている人物です。そのため、ユダヤ人(ユダヤ教)の歴史は紀元前20世紀頃の「神とアブラハムとの契約」が起点とされています。また、イスラム教のコーランではアラブ人をアブラハム-イシュマエル(長男/女奴隷ハガルとの子)の子孫であるとしています。

アブラハムの人物伝は、旧約聖書に記録されています。ユダヤ教・キリスト教・イスラム教は、旧約聖書を聖典としています。そのため、アブラハムは3つの宗教に共通する「聖典(啓典)の民」の始祖であり、「信仰の父」と呼ばれています。

なお、アブラハムの名は、神の命令により「アブラム」から改名したものです。ヘブライ語で「多数の父」を意味します。ちなみに、妻サラの名は「サライ」から改名したものです。

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アブラハムの生誕

アブラム(のちにアブラハム)は、カルデアのウルの裕福な遊牧民の家に生まれました。イスラーム伝承によると、アブラハムの父は偶像商を営むテラで、唯一神(ヤハウェ)に反逆するニムロデの忠実な臣下だっとされており、アブラハムの神(唯一神・ヤハウェ)への信仰を持つことはなかったとされています。

※カルデアのウルは、メソポタミア南東部(現在のイラク南部)に広がる湿地帯の古代都市。

聖書に登場する神の摂理の中心人物は、生誕時に時の王に殺害されそうになることが、少なくありません。アブラハムもその例外ではありませんでした。

アブラムが生誕する夜は、雨が激しく、空は厚い雲で覆われていました。そして、アブラムが生まれる頃、雲の背後から大きな星が現れ、暗闇を照らすほど明るく輝きました。人々が不思議がってその星を眺めていると、近くにあった他の大きな4つの星を飲み込んでしまいました。その不思議な光景をウル王国の王ニムロデが人々から聞いたとき、王は悲しみとともに怒りました。

その晩、ニムロデはなかなか寝付けずに、悪夢にうなされました。近い将来、自分よりも強く勇敢な新しい王が立って、王国を取られてしまう夢を見たのです。そして、王国の中の一つの家に新しい王となる子が生誕したことを悟ります。ニムロデ王は部下に、全ての家を探して、生まれたばかりの幼な子を彼のところに連れて来るように命じました。これを聞いたアブラムの両親は、大変恐れ、息子を取って、山の洞穴に姿を隠しました。母は3年間、洞穴の中で食料と太陽の光が欠乏しないようにアブラムを大切に育てました。

Old Testament

ナホルは二十九歳のとき、テラを生んだ。ナホルは、テラが生まれた後百十九年生きて、息子や娘を生んだ。テラが七十歳になったとき、アブラム、ナホル、ハランを生んだ。

旧約聖書「創世記」11/24~26

Column

神がようやく見つけた価値ある石

全く驚いた。
洪水の世代からアブラムまで10世代が過ぎた。
その間、神は誰一人として世話をしなかった。
それなのに、なぜ神は、今、アブラムをそんなに
大切にされるのだろうか。

賢者の一人が、たとえ話で答えた。
かつて、王様にとって価値のある石がなくなった。
そこで王は、部下を集めて、価値ある石を探すよう命じた。
部下たちは、大きな砂濾(こ)し器をたくさん準備した。
そして、砂を集めて山にした。そして、濾し始めた。
一つの山から価値のある石が見つからないと、
次の山へと移った。

多くの苦労を重ねた後、ついに価値ある石を見つけた。
これまで神は、すべての世代にわたり、
神をおそれる正直な人間、
イスラエルの国を起こすことができる人間、
そのような人間をずっと探していたが、
見つけることができなかった。
アブラムが生まれたとき、
神はついにふさわしい人間を見つけた。
神は価値ある石を見つけたのだ。
アブラムはイスラエルの国の祖父となるであろう。

〔参考・引用〕原典はヘブライ語「セフェル・ハアガダー・レツァイリーム」
Website「BokerTov/われらの祖父アブラハムの生誕」 の英訳もとに日本語訳
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アブラハムの生誕とモーセの生誕の類似

モーセの生誕時、イスラエル民族(ヘブライ人)は、エジプトで苦役を受けていました。ヘブライ人が増えすぎることを懸念したファラオ(エジプトの王)は、ヘブライ人に男児が生まれたら殺害するよう命令します。モーセの母は我が子を救うため、パピルスの籠の中に幼児であるモーセを入れてナイル川に流しますが、幼児はファラオの娘に拾われて宮殿で育てられます。そして、モーセの姉の機転で、実の母親が乳母として王女に雇われ、モーセを育てることができました。

Old Testament

ファラオは全国民に命じた。「生まれた男の子は、一人残らずナイル川にほうり込め。女の子は皆、生かしておけ。」
レビの家の出のある男が同じレビ人の娘をめとった。彼女は身ごもり、男の子を産んだが、その子がかわいかったのを見て、三か月の間隠しておいた。しかし、もはや隠しきれなくなったので、パピルスの籠を用意し、アスファルトとピッチで防水し、その中に男の子を入れ、ナイル河畔の葦の茂みの間に置いた。
その子の姉が遠くに立って、どうなることかと様子を見ていると、そこへ、ファラオの王女が水浴びをしようと川に下りて来た。その間侍女たちは川岸を行き来していた。王女は、葦の茂みの間に籠を見つけたので、仕え女をやって取って来させた。開けてみると赤ん坊がおり、しかも男の子で、泣いていた。王女はふびんに思い、「これは、きっと、ヘブライ人の子です」と言った。そのとき、その子の姉がファラオの王女に申し出た。「この子に乳を飲ませるヘブライ人の乳母を呼んで参りましょうか。」「そうしておくれ」と、王女が頼んだので、娘は早速その子の母を連れて来た。王女が、「この子を連れて行って、わたしに代わって乳を飲ませておやり。手当てはわたしが出しますから」と言ったので、母親はその子を引き取って乳を飲ませ、その子が大きくなると、王女のもとへ連れて行った。その子はこうして、王女の子となった。王女は彼をモーセと名付けて言った。「水の中からわたしが引き上げた(マーシャー)のですから。」

旧約聖書「出エジプト記」1/22~2/10

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アブラハムの生誕とイエスの生誕の類似

イエスは、ユダヤを統治していたヘロデ大王の時代に生誕しました。ユダヤ人の王として生まれたイエスの噂を聞いたヘロデ王は、自らの立場が失われるのではないかと恐れ、ベツレヘムの二歳以下の幼児を皆殺しにするよう命令しました。これを知ったヨセフとマリアはイエスを連れて、エジプトへ非難しました。

New Testament

占星術の学者たちが帰って行くと、主の天使が夢でヨセフに現れて言った。「起きて、子供とその母親を連れて、エジプトに逃げ、わたしが告げるまで、そこにとどまっていなさい。ヘロデが、この子を探し出して殺そうとしている。」
ヨセフは起きて、夜のうちに幼子とその母を連れてエジプトへ去り、ヘロデが死ぬまでそこにいた。それは、「わたしは、エジプトからわたしの子を呼び出した」と、主が預言者を通して言われていたことが実現するためであった。
さて、ヘロデは占星術の学者たちにだまされたと知って、大いに怒った。そして、人を送り、学者たちに確かめておいた時期に基づいて、ベツレヘムとその周辺一帯にいた二歳以下の男の子を、一人残らず殺させた。

新約聖書「マタイによる福音書」2/13~2/16


〔参考・出典〕
日本聖書協会「旧約聖書(新共同訳/口語訳)」/新日本聖書刊行会「新改訳聖書第三版」/wikipedia/ウェブサイト「BokerTov」