ユダヤ教 契約の宗教 嘆きの壁 ユダヤ教の歴史年表

嘆きの壁
紀元前965年頃、イスラエル王国の首都エルサレムのモリヤの丘(=イサク燔祭の場)にソロモン王が神殿を建てました。神殿には神がモーセに与えた律法(十戒)の石板を収めた「契約の櫃(ひつ)」が安置され、聖地となりました。最初の神殿は前586年に破壊され、前515年頃に、第2神殿として再建されました。そして紀元前20年には、ローマ帝国がユダヤの王に任命したヘロデ王により、大改築されました。80年余りの歳月をかけて完成したヘロデ王の神殿は、当時の歴史家が「誰も見たことも聞いたこともない、絶美の建物」と称賛する壮麗な建造物だったとのこと。しかしその数年後の紀元70年、ローマ軍によって破壊されてしまいました。神殿の破壊とともに、ユダヤ人はエルサレムへ立ち入ることさえ、禁じられ、その後2000年近くにわたって世界に離散することになりました。「嘆きの壁」は第2神殿の破壊時に残った唯一の壁。ユダヤ人にとっては、民族の悲しみの歴史を象徴し、この地に先祖が住んでいたという証になっています。

ユダヤ教

ユダヤ教の成立

ユダヤ教は、ユダヤ人(※)が信仰する民族宗教で「世界最古の宗教」といわれています。ユダヤ人の歴史は、紀元前20世紀頃のアブラハムが起点となりますが、ユダヤ教は、紀元前13世紀(推定:紀元前1280年頃)のモーセが神から授けられた「十戒」によって、ほぼ現在につながる宗教として確立しました。

なお、ユダヤ教はキリスト教とイスラム教を生む母体となった宗教です。そのため、信仰する神の呼称は違いますが、同じ唯一の神を崇めています。

※ユダヤ人:ユダヤ人は、アブラハムの孫であるヤコブの子孫。ユダヤ人(の母親)から生まれた人とユダヤ教を信仰している人もユダヤ人としています。なお、聖書の中では、ユダヤ人は、ヘブライ語を話していたことから「ヘブライ人」、ヤコブ(イスラエル)の子孫であることから「イスラエルの民」などとして記録されています。

ユダヤ教の聖地「嘆きの壁」

ユダヤ教徒が神に感謝し心を癒やす祈りの壁「嘆きの壁」


ユダヤ教の教義

ユダヤ教では、ユダヤ人こそ神に選ばれた民族(※1)であり、神の教え(律法・戒律・教義など)を実践していれば、神により守られ、やがてメシア(救世主)が現れ、人々は(悪や苦しみ、矛盾などから)救済され、神の国が実現することが説かれています。信者の数は約1400万人(※2)。そして、神との契約にもとづいて割礼や礼拝といった戒律を長年守り続けています。なお、神との契約内容は、ユダヤ教の聖典である「トーラー(※3)(※4)」や「タルムード」に記述されています。

※1:ユダヤ人(イスラエル人)は神に選ばれ、神と契約を結んだ特別な民族であるという考えを「選民思想」と言い、ユダヤ教の根底にあります。

※2:ピュー・リサーチセンター(2012年12月18日)

※3:トーラーは、ヘブライ語聖書(=キリスト教の旧約聖書に相当)の創世記、出エジプト記、レビ記、民数記、申命記の5つの書のこと。これらは、モーゼの五書、律法、ペンタチュークなどと呼ばれています。

※4:ヘブライ語聖書(=キリスト教の旧約聖書に相当)は、3つの部分に分けられており、それぞれ、Torah(トーラー:モーセ五書)、Nevim(ネイビーム:預言者)、Ketubim(クトビーム:諸書)と名付けられています。この頭文字(TNK)から、ヘブライ語聖書は「タナハ」と呼ばれています。また、朗読するものという意味の「ミクラ」と呼ばれることもあります。


ユダヤ教の概要

性格民族宗教/一神教
信者数約1400万人
成立時期紀元前13世紀頃(紀元前1280年頃)
創始者モーセ
信仰対象神(唯一の神 "ヤハウェ")
聖典ヘブライ語聖書
タルムード
儀礼・戒律安息日、割礼、食事のタブー(コーシェル)など
特徴選民思想、契約(※)
行事過超祭、仮庵祭、律法祭
信者のための施設シナゴーク
聖地エルサレム(嘆きの壁)
おもな宗派正統派、保守派、改革派

※ユダヤ教は神と人との契約によって成り立っている宗教で「契約の宗教」と言われています。旧約聖書の「創世記」に記されている「アブラハムと神との契約」の他、大洪水後の人類のあり方を示した「ノアの契約」、「出エジプト記」に記されている「シナイ契約」、「詩篇」にある王朝の将来を約束する「ダヴィデの契約」などがあります。


波乱に富んだユダヤ教の歴史

アブラハムの孫であるヤコブの子孫がイスラエル民族(ユダヤ人)ですが、ユダヤ人は、波乱に富んだ苦難の歴史を歩んできました。

エジプトでの400年間の苦役に始まり、イスラエル王国の分裂、バビロン捕囚、キリスト教徒からの迫害、カナン(※)から世界各地への離散(ディアスポラ)、第二次世界大戦中のナチス・ドイツによる大虐殺など…「ユダヤ人の歴史=迫害の歴史」と言えるでしょう。

※カナン=神との約束の地(イスラエルのパレスチナ地方)

第2次世界大戦後、このような迫害や虐殺のユダヤ人の歴史が世界の同情を買い(※)、イスラエル建国に大きく傾きました。そして、1948年にはユダヤ人によるイスラエル国が誕生しましたが、今日に至るパレスチナ問題を引き起こしています。

※戦後の1947年に出版された「アンネの日記」は、ナチス・ドイツによるユダヤ人狩りを恐れ隠れて生活していたユダヤ人の少女アンネ・フランクが隠れ家で綴ったもの。アンネもまたドイツの強制収容所に送られ、15年という短い生涯を閉じますが、この日記の出版により、世界の人々はユダヤ人に同情的になり、イスラエル建国を後押しする大きな要因になったと言われています。

ユダヤ人の歴史/アブラハム~中東戦争まで
前20世紀
(紀元前1921年)
アブラハムが神と契約
(ハランを出発しカナンへ出発)
前15世紀
(紀元前1491年)
モーセがシナイ山で神から十戒を授かる
前11世紀
(紀元前1095年)
サウルがイスラエルの初代王に即位
(在位:前1095年~前1055年頃)
前11世紀
(紀元前1055年)
ダビデがイスラエルの王に即位
(在位:前1055年~前1015年)
前11世紀
(紀元前1015年)
ソロモンがイスラエルの王に即位
(在位:前1015年~前975年)
前11世紀
(紀元前1004年)
ソロモン王がエルサレムに神殿を建設
前10世紀
(紀元前975年)
イスラエル王国が南北に分裂
紀元前586~538年バビロン捕囚
紀元前515年エルサレム神殿(第2神殿)が復興
前63年ローマがイスラエルを支配下に置く
前20年ヘロデ王がエルサレム神殿を増改築
66~135年ユダヤ戦争、ユダヤ人が世界に離散
1215年第4回ラテラン公会議
1492年スペインからユダヤ人が追放される
1516年ヴェネツィアでゲットーがつくられる
19世紀後半ロシア・東欧でユダヤ人虐殺(ポグロム)
1894~1906年ドレフェ事件
1897年第1回世界シオニスト会議が開催
1917年イギリスによるバルフォア宣言
1933~45年ナチスドイツによるユダヤ人虐殺(ホロコースト)
1947年国連でパレスチナ分割決議が採択
1948年イスラエル国建国
1948~73年中東戦争

〔参考・引用〕
成美堂出版「図解 宗教史」/Ussher chronology


メシアを待望するユダヤ教徒

イエス・キリストの時代には、ユダヤ人たちは、ダビデ王の子孫からメシア(救い主/ユダヤ人の王)が現れて、イスラエルを中心に「神の国」が実現すると信じていました。そして、ユダヤ人は神が約束したメシアの出現を待望しながら、律法を遵守した暮らしを続けていました。

しかし、イエス・キリストが現れたときには、メシアとして信じることができず、十字架に架けて殺害してしまいました。今でも、ユダヤ教では、イエス・キリストのことをメシアと認定しておらず、現在もメシアの到来を待ち望んでいます(※)

※ただし、ユダヤ教信者の中には、ユダヤ人としてのアイデンティティーを保ちながら、イエス・キリストをメシアとして信じる「メシアニック・ジュー」と呼ばれるもいます。


〔参考・引用〕
旧約聖書/wikipedia/テレビ東京「137億年の物語」/成美堂出版「図解 宗教史」/中経出版「池上彰の世界の宗教が面白いほどわかる本」