ギリシア神話「パンドラの箱」

ギリシア神話「パンドラの箱」

プロメテウスの謀反

ギリシア神話の最高の神はゼウスです。ゼウスは、全知全能であり、全宇宙や天候を支配し、人類と神々の秩序を守護する天空神です。また、神々と人間たちを創造した父なる神とされています。

ギリシア神話は、多神でありながら、ゼウスは唯一神的な存在となっている

ゼウスは、男性神プロメテウスに、自らと同じ姿をした生き物を粘土で作るよう命令します。プロメテウスがゼウスの命令に従い、生き物を作ると、ゼウスはそれに命を吹き込んで「人間」を創造しました。

鎖で縛りつけられたプロメテウス

さらに、ゼウスは、人間に、生きていく為の、知恵を授けるようプロメテウスに命令しました。このとき、火を使う事を教えることだけは禁じました。天地創造の力をも持つ「神の火焔(かえん)」を、未熟な存在である人間に渡す事は、神々の間では禁じられていたのです。

プロメテウスは人間にさまざまなことを教えているうちに、人間を愛するようになります。そして、人間が幸せになると信じて、ゼウスの命令に背き、天界から盗み出した火を与えてしまいました。

これに激怒したゼウスは、プロメテウスを捕らえ、世界の東のはずれの山頂の岩に青銅の鎖で永遠に縛りつけてしまいました。


パンドラの誕生

プロメテウスが天界の火を盗んで人間に与えたことに激怒したゼウスは、償い(罰)として、人間にも災いを与えようと計画します。そして、職人の神(鍛冶神ヘパイストス)に命じて、粘土からこの世で一番美しい女性パンドラを創らせます。そして、プロメテウスの弟(=エピメテウス)のところへ送り込みました。

人類最初の女性パンドラ

パンドラには、神々から最上の贈り物がさずけられていました。知恵の女神(アテナ)からは「知恵」を、美の女神(アフロディーテ)からは「美貌」を、芸術の神(アポロン)からは「美しい歌声と癒しの力」を、そしてゼウスからは、「好奇心」が与えられていました。パンドラは人類の最初の女性とされ、その名には「すべてを贈られたもの(※)」という意味があります。

※パンドラ(パン=すべて、ドロン=贈り物)


禁を破ってしまったパンドラ

エピメテウスはパンドラの美しさに心を奪われ、自分の妻にしました。エピメテウスの家には、美しい黄金の箱がありました。その箱の中には、病気、盗み、ねたみ、憎しみ、悪だくみなど、人間を苦しめるありとあらゆる悪が入っており、それらが人間世界に広がらないように閉じ込めてあったのです。

パンドラは禁じられた箱を開けてしまった

ある日、エピメテウスは出かける用事があり、家を留守にしなければならなくなりました。好奇心旺盛な彼女を気がかりに思った彼は「あの箱だけは、決して開けてはならないよ」と言い残して出かけました。しかし、パンドラは、箱の中には、素晴らしい宝物が入っていると違いないと思い「少し覗くだけなら」とその箱を少し開けてしまいます。そのとたん、病気、憎しみ、ぬすみなどあらゆる悪が箱から飛び出して、人間の世界に飛び散りました。あわてたパンドラがふたを閉めた時、箱の中には、唯一「希望」だけが飛び出せずに残っていました。


禁を破り、後天的に広がった「悪」

人類最初の女性パンドラは、開けることを固く禁じられていた箱を、禁を破り開いてしまいました。そして、そこから、病気、苦痛などあらゆる災いが飛び出して、人類の間に蔓延することになってしまいました。ギリシア神話「パンドラの箱」の物語からは、悪が後天的に生じたものであることを読み取ることができます。

それは、日本神話の「イザナギとイザナミの物語」や旧約聖書の「失楽園の物語」と同じように、(女性が)禁を破ることにより、悪がこの世にもたらされたことと類似しています。