アブラム・アブラハムの誕生 父テラ(偶像商)ハランへ

 トップページ旧約の時代 → アブラハムの路程 → アブラハムの誕生
 
 

アブラハムの誕生

信仰の父・アブラハムとは

アブラハム(※1)ノアの洪水後、神による人類救済の出発点として選ばれ祝福された最初の預言者で、ノアの息子セムから数えて10代目の子孫(ノアから約400年)です。

また、アブラハムはユダヤ人の始祖(※2)とされている人物です。そのため、ユダヤ教(ユダヤ人)の歴史は紀元前20世紀頃の「神とアブラハムとの契約」が起点とされています。

Abraham Offers Isaac<br />Henry Davenport Northrop's 1894

Abraham Offers Isaac
Henry Davenport Northrop's 1894

アブラハムの人物伝は、旧約聖書に記録されています。そのため、旧約聖書を聖典とするユダヤ教・キリスト教・イスラム教の3つの宗教に共通する聖典の民の始祖となっており、「信仰の父」と呼ばれています。

※1:アブラハムの名は、神の命令により「アブラム」から改名したものです。妻サラの名は「サライ」から改名したものです。

※2:現在のユダヤ人はアブラハム-イサク(次男/妻サラとの子)-ヤコブの子孫であると言われています。一方、イスラム教のコーランではアラブ人をアブラハム-イシュマエル(長男/女奴隷ハガルとの子)の子孫であるとしています。


アブラムの誕生

アブラム(のちにアブラハム)は、カルデラのウル(※1)の裕福な遊牧民の家に生まれました。父の名はテラ。偶像商を営んでいたと言われています。

ナホルは二十九歳のとき、テラを生んだ。ナホルは、テラが生まれた後百十九年生きて、息子や娘を生んだ。テラが七十歳になったとき、アブラム、ナホル、ハランを生んだ。

旧約聖書/創世記11章24節~26節


アブラム誕生時の危機

聖書に登場する主人公は、命の危機にさらされることが多いようです。特に、誕生して間もなく、時の王に殺害されそうになる場面が少なくありません。

アブラムが誕生する夜は、雨が激しく、空は厚い雲で覆われていました。そして、アブラムが生まれる頃、雲の背後から大きな星が現れ、暗闇を照らすほど明るく輝きました。
人々が不思議がってその星を眺めていると、近くにあった他の大きな4つの星を飲み込んでしまいました。人々が不思議な光景をウル王国の王ニムロデに知らせに行ったときには、王は悲しみとともに怒っていました。
その晩、ニムロデはなかなか寝付けずに、悪夢にうなされました。近い将来、自分よりも強く勇敢な新しい王が立って、王国を取られてしまう夢を見たのです。そして、王国の中の一つの家に新しい王となる子が誕生したことを悟ります。
ニムロデ王は部下に、全ての家を探して、生まれたばかりの幼な子を彼のところに連れて来るように命じました。これを聞いたアブラムの両親は、大変恐れ、息子を取って、山の洞穴に姿を隠しました。母は3年間、洞穴の中で食料と太陽の光が欠乏しないようにアブラムを大切に育てました。

原典はヘブライ語「セフェル・ハアガダー・レツァイリーム」
Website「BokerTov/われらの祖父アブラハムの誕生」
の英訳もとに日本語に要約

上記の逸話では、アブラムが王に殺されそうになり、母により保護されますが、その後のモーセやイエスにも似たようなエピソードが聖書に記録されています。

●モーセの場合---------------------------------------------

モーセが生まれた当時、イスラエル民族(ヘブライ人)は、エジプトで苦役を受けていました。ヘブライ人が増えすぎることを懸念したファラオ(エジプトの王)は、ヘブライ人に男児が生まれたら殺害するよう命令します。モーセの母は我が子を救うため、パピルスの籠の中に幼児であるモーセを入れてナイル川に流しますが、幼児はファラオの娘に拾われて宮殿で育てられます。そして、モーセの姉の機転で、実の母親が乳母として王女に雇われ、モーセを育てることができました。

ファラオは全国民に命じた。「生まれた男の子は、一人残らずナイル川にほうり込め。女の子は皆、生かしておけ。」
レビの家の出のある男が同じレビ人の娘をめとった。彼女は身ごもり、男の子を産んだが、その子がかわいかったのを見て、三か月の間隠しておいた。しかし、もはや隠しきれなくなったので、パピルスの籠を用意し、アスファルトとピッチで防水し、その中に男の子を入れ、ナイル河畔の葦の茂みの間に置いた。
その子の姉が遠くに立って、どうなることかと様子を見ていると、そこへ、ファラオの王女が水浴びをしようと川に下りて来た。その間侍女たちは川岸を行き来していた。王女は、葦の茂みの間に籠を見つけたので、仕え女をやって取って来させた。開けてみると赤ん坊がおり、しかも男の子で、泣いていた。王女はふびんに思い、「これは、きっと、ヘブライ人の子です」と言った。そのとき、その子の姉がファラオの王女に申し出た。「この子に乳を飲ませるヘブライ人の乳母を呼んで参りましょうか。」「そうしておくれ」と、王女が頼んだので、娘は早速その子の母を連れて来た。王女が、「この子を連れて行って、わたしに代わって乳を飲ませておやり。手当てはわたしが出しますから」と言ったので、母親はその子を引き取って乳を飲ませ、その子が大きくなると、王女のもとへ連れて行った。その子はこうして、王女の子となった。王女は彼をモーセと名付けて言った。「水の中からわたしが引き上げた(マーシャー)のですから。」

出エジプト記/1章22節~2章10節
©日本聖書協会/旧約聖書 新共同訳

●イエスの場合---------------------------------------------

イエスは、ユダヤを統治していたヘロデ大王の時代に誕生しました。ユダヤ人の王として生まれたイエスの噂を聞いたヘロデ王は、立場が失われるのではないかと恐れ、ベツレヘムの二歳以下の幼児を皆殺しにしました。ヨセフとマリアはイエスを連れて、エジプトへ非難しました。

占星術の学者たちが帰って行くと、主の天使が夢でヨセフに現れて言った。「起きて、子供とその母親を連れて、エジプトに逃げ、わたしが告げるまで、そこにとどまっていなさい。ヘロデが、この子を探し出して殺そうとしている。」
ヨセフは起きて、夜のうちに幼子とその母を連れてエジプトへ去り、ヘロデが死ぬまでそこにいた。それは、「わたしは、エジプトからわたしの子を呼び出した」と、主が預言者を通して言われていたことが実現するためであった。
さて、ヘロデは占星術の学者たちにだまされたと知って、大いに怒った。そして、人を送り、学者たちに確かめておいた時期に基づいて、ベツレヘムとその周辺一帯にいた二歳以下の男の子を、一人残らず殺させた。

マタイによる福音書/2章13節~2章16節
©日本聖書協会/新約聖書 新共同訳


神がようやく見つけた価値ある石

全く驚いた。
洪水の世代からアブラムまで10世代が過ぎた。
その間、神は誰一人として世話をしなかった。
それなのに、なぜ神は、今、アブラムをそんなに
大切にされるのだろうか。

賢者の一人が、たとえ話で答えた。
かつて、王様にとって価値のある石がなくなった。
そこで王は、部下を集めて、価値ある石を探すよう命じた。
部下たちは、大きな砂濾(こ)し器をたくさん準備した。
そして、砂を集めて山にした。そして、濾し始めた。
一つの山から価値のある石が見つからないと、
次の山へと移った。

多くの苦労を重ねた後、ついに価値ある石を見つけた。
これまで神は、すべての世代にわたり、
神をおそれる正直な人間、
イスラエルの国を起こすことができる人間、
そのような人間をずっと探していたが、
見つけることができなかった。
アブラムが生まれたとき、
神はついにふさわしい人間を見つけた。
神は価値ある石を見つけたのだ。
アブラムはイスラエルの国の祖父となるであろう。

原典はヘブライ語「セフェル・ハアガダー・レツァイリーム」
Website「BokerTov/われらの祖父アブラハムの誕生」
の英訳もとに日本語訳



〔参考・引用〕
日本聖書教会「旧約聖書(新共同訳/口語訳)」/新日本聖書刊行会「新改訳聖書第三版」/wikipedia/ウェブサイト「BokerTov」